うつと幻聴に対するrTMS(反復経頭蓋磁気刺激療法)の効果

海外では治療抵抗性の幻聴に対し、rTMS(反復経頭蓋磁気刺激療法)が行われることがあります。
今回は、1例報告ですが、非常に長期に渡って継続していた音楽性の幻聴に対するrTMSの効果を示した報告をご紹介します。
左側頭頭頂移行部への低頻度rTMSによる音楽性幻聴の効果的抑制
症例は61歳の女性で、30代でうつや不安を発症し、多くの薬物療法を試してきました。
今回の治療から7年前に肺炎の治療を行った際に、精神病性の症状を発症し、それ以後苦痛の大きい音楽性の幻聴を伴うようになりました。
幻聴は生活時間の70%程度を占めており、日常会話とほぼ同じ音量で流れているとのことで、生活への支障は非常に大きなものでした。
これらの症状に対して、(幻聴に有効と言われている)左側頭頭頂移行部と(うつ症状に有効と言われている)右背外側前頭前野に対する低頻度rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)を行いました。
治療開始から5日目から幻聴の減少を実感し始め、5週間で25回まで治療を行った後、徐々に実施回数を減らし、最終的には週1回で症状が安定しているとのことです。
幻聴の聞こえている時間は、元の70%から25%に減少し、最終的に全体的な苦痛が83%軽減しました。
さらにうつ症状についても、うつ病尺度(MADRS scores)で29点から5点へ(83%の減少)と大きな改善を認めました。
様々な条件が重なり、大きな改善となったのかもしれませんが、数十年に及ぶ重いうつ症状や苦痛の強い長期の幻聴が大きく改善した例として、rTMSでの治療に希望が持てる症例報告でした。