機能性精神疾患の多くは、血液や脳脊髄液の所見で明らかな異常を認めず、症状の組み合わせ(診断基準との合致)で診断されます。
しかし、診断の正確さや疾患に対する理解を深める上でも、客観的指標を確立することが重要で、血液や脳脊髄液の成分変化、画像所見等について、疾患特有の変化が調査されてきました。
今回は、うつ病に関して、特に脳の活動を直接反映しやすい脳脊髄液の成分変化(バイオマーカー)をまとめた分析(メタ・アナリシス)をご紹介します。
単極型うつ病と健常者における脳脊髄液バイオマーカーの比較
脳脊髄液のバイオマーカーについて単極型のうつ病と健常者の比較対照を行っている97本の論文が分析の対象となりました。
結果として、以下の内容が示されました。
①健常者と比較して単極性うつ病で上昇を認めたバイオマーカーとしては、インターロイキン6、総蛋白、コルチゾールがありました。
②健常者と比較して単極性うつ病で低下を認めたバイオマーカーとしては、ホモバニリン酸、γ-アミノ酪酸、ソマトスタチン、BDNF、β-アミロイド40、トランスサイレチンがありました。
つまり、“単極性うつ病では、脳脊髄液の様々な成分で多様な変化を生じており、その原因・機序に関しても、多様性が想定される”と言えそうです。
今回の結果からは、神経の炎症、血液-脳関門の透過性変化、ドーパミン系・視床下部-下垂体-副腎皮質系の異常等、様々な機能的異常が想定されましたが、今後疾患概念も含めて、原因や結果ごとの再編が必要なのかもしれません。
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