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執筆者の写真もりさわメンタルクリニック

うつ病における思い出の手がかり

◎要約:『うつ病における自伝的記憶は匂いをきっかけにする方が思い出しやすい可能性がある』






うつ病では記憶力の低下があり、自伝的記憶の想起も低下することが指摘されてきました。


今回は、そのような記憶の思い出し(想起)のきっかけとして匂いや言葉を使って、その有効性を調べた研究をご紹介します。


Recall of Autobiographical Memories Following Odor vs Verbal Cues Among Adults With Major Depressive Disorder

うつ病における匂いか、言葉をきっかけとした想起の手がかり


うつ病に罹患している32人(平均30.0、26人が女性)が対象となりました。


個人にまつわる記憶について、匂いまたは言葉をきっかけ(cue)として、想起に関する有効性、その他の性質を調べました。


結果として、以下の内容が示されました。


・言葉よりも匂いを用いたほうが、想起に有効でした (mean [SD], 68.4% [20.4%] vs 52.1% [23.3%]; Cohen d, 0.78; P < .001)。


・匂いによる想起のほうが、刺激が強く、鮮明でしたが、想起の速度はゆっくりでした (mean [SD], 14.5 [3.6] vs 8.9 [3.4] seconds; Cohen d, 1.18; P < .001)。


・想起の難しさは、言葉を用いた場合には健常群に比べて劣っており、匂いを用いた場合には健常群と明らかな違いはありませんでした (Cohen d, 0.26; P = .15)。




匂いと記憶との結びつきは、言葉を介するよりもより直接的で薄れにくい可能性が考えられました。


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