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うつ病のセロトニン仮説は本当か?

執筆者の写真: もりさわメンタルクリニックもりさわメンタルクリニック

うつ病の原因について、神経と神経の仲立ちをする神経伝達物質の一つ(セロトニン)が少なくなることが原因であるという説(セロトニン仮説)があります。


今回は、以前の論文(2022年)ですが、このセロトニン仮説が本当だろうか?と疑問符を投げかける内容の論文をご紹介します。


The serotonin theory of depression: a systematic umbrella review of the evidence

うつ病のセロトニン仮説: エビデンスの系統的アンブレラレビュー


今回行われたのは研究を統合したメタ・アナリシスをさらに全体的に分析したアンブレラレビューと呼ばれる研究で、17本の研究(12本のシステマティック・レビュー等を含む)が分析の対象となりました。


これらの研究は、対象の重複を含むため、統合は行われず、系統的なレビューを行っています。


現在までに行われたメタ・アナリシスについて、多くの分析を行っていますが、例として以下のような内容がありました。


・2本のセロトニン代謝物(5-HIAA)を調べたメタ・アナリシスではうつ病との関連を認めなかった。


・1本のメタ・アナリシスでは血漿中のセロトニン濃度とうつ病との関連は認められず、抗うつ薬の使用と関連してセロトニン濃度は低下していた。


・2本のメタ・アナリシスではセロトニン受容体の一つである5-HT1A受容体を調べており、また対象が重複する3本のメタ・アナリシスではセロトニン関連物質であるSERT(serotonin 5-HT1A receptor binding; serotonin transporter )を調べていたが、対象領域のセロトニン結合がわずかに低下している証拠しかなかった。


要約:『うつ病のセロトニン仮説を信じる根拠はあまりなさそうだ』


これで、セロトニン仮説が否定されるわけではないと思われますが、抗うつ薬の効果の説明として良く使われる仮説なので、意外と基礎が弱い点が印象に残る内容でした。



もりさわメンタルクリニック:https://www.morisawa-mental-clinic.com/

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