◎要約:『うつ症状と認知能力(特に記憶力)は互いに影響し合っているかもしれない』

うつ病では、気分の落ち込みや意欲低下とともに、記憶や処理能力などの認知機能が低下すると言われています。
今回は、長期の経過で、うつ症状と認知機能の影響関係について調べた研究をご紹介します。
時間経過で見たうつ症状と認知機能の双方向的影響
Bidirectional Associations of Depressive Symptoms and Cognitive Function Over Time
50歳以上の一般地域に住む人々8,268人(研究開始時点で平均64歳、55%女性)について、16年間の経過を追い、うつ症状と認知機能との関連を調べました。
結果として、以下の内容が示されました。
・開始時点でうつ症状が強い場合には、記憶力・言語の流暢性(例えば、言葉の出てきやすさ)に低下を認めました。
・時間経過の中で、うつ症状が大きく悪化している場合には記憶力低下の割合も大きく、逆に記憶力低下が急速に起こっている場合にはうつ症状の悪化も大きくなっていました(影響の双方向性がありました)。
・双方向性の影響は、言語の流暢性に関しては認められませんでした。
以前から言われている、仮性認知症(うつ症状が原因で一見認知症に見える病態)の経過が確認できた内容でした。
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