フリードリヒ・ニーチェの言葉には、逆境にある人を勇気づける力強い名言が多く、その中に、“我々を殺さないものは、我々を一層強くする”というものがあります。
“ストレス免疫仮説(訳はブログ著者):stress inoculation hypothesis”ともいうべき、この考え方「つらいことがあってもへこたれなければ、次からは耐えられるようになる」といった内容は本当に正しいのでしょうか?
今回は、この「つらい体験⇒心に免疫」について調べた研究についてご紹介します。
チリの災害生存者における心理社会的ストレスと精神的回復力の関連についての検討
これは地震の多いことで知られるチリでの研究です。プライマリ・ケア関連の別の研究“adult Chilean primary care attendees”を行っている時(2010)に、チリで非常に大きな地震が発生しました。
今回の研究はそれ以前のデータとその後のPTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病の発生について調査した結果を用いています。
災害前のストレス因子が(ここで用いている)1単位分増えるごとに、災害後のPTSD(オッズ比1.21倍)やうつ病(同1.16倍)が増えていました。
これだと、それほど影響がないような気がしますが、4つ以上のストレス因子がある場合ではPTSDは2.77倍となっていました。
以上のように、少なくとも心理的なストレスは、その後の心理的負荷に対する免疫となるよりは、より脆弱にする影響があるようです。
厳しい体験をするとさらに次からつらくなるというのは、勇気を挫く見方かもしれませんが、実感としては一致する部分もあると思われます。
今後は、上記のようなニーチェ的免疫が得られる場合と心的外傷を受けやすくなる場合とで何が異なるのか知りたいと考えました。
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