パーキンソン病は代表的な神経変性疾患であり、固縮・振戦・小刻み歩行等の特徴的な症状で知られています。
パーキンソン病には幻覚などの精神病症状やうつ等が伴いやすいことで知られています。
今回は、これらの精神症状が、どのような病理的変化(顕微鏡で見た組織の変化)を背景とするのか調べた研究をご紹介します。
パーキンソン病のうつや精神病症状と関連する脳幹の病理的変化
パーキンソン病を原疾患とする175人について、パーキンソン病で病理的変化が起こる部位(黒質や青斑核)の神経脱落やレビー小体(パーキンソン病やレビー小体型認知症で脳細胞に現れる通常では認めない物質の沈着を示す小構造)のスコアを調べました。
上記のような病理的変化と精神症状との関連を調べた結果、以下の内容が示されました。
①精神症状が認められた割合を示すと、精神病症状56%、うつ症状50%、不安31.25%となっていました。
②精神病症状とうつは、病理的変化のうち黒質の神経細胞脱落とグリオーシス(星状膠細胞の増生)と関連していましたが、レビー小体との関連は明らかではありませんでした。
③不安と病理的変化との関連は明らかではありませんでした。
つまり、“パーキンソン病における幻覚などの精神病症状とうつは、黒質の神経細胞脱落とグリオーシスといった病理変化と関連するが、レビー小体の出現には関連しない”と言えそうです。
このような症状の基礎である病理的変化が分かることによって、その変化の抑制や改善を目的とする薬剤の開発等につながることが期待される研究でした。
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