精神科や心療内科では、“睡眠薬”や“抗不安薬”という分類をされる薬がよく処方されます。
これらの薬の大半は、共通して持っている化学的な構造に由来して“ベンゾジアゼピン”(現在、海外では使用を推奨していない国が多い)と呼ばれます。
このベンゾジアゼピンは、本来処方どおりに使用すれば有用で、副作用も少ないとして長年使用されてきました。
しかし、最近は“慣れ”により用量が増えることや、依存性が形成され止めにくいこと、認知能力等に対する影響等が指摘されており、処方をできるだけ控える方向になりつつあります。
今回ご紹介するデータは、アメリカの研究ですが、さらにベンゾジアゼピンにとって旗色の悪い資料になってしまいそうです。
ベンゾジアゼピンに関連する救急部門の受診
アメリカにおける2016~2017年のデータで、ベンゾジアゼピン関連の救急受診212,770件が分析の対象となりました。
結果として、以下のような内容が示されました。
①半数を超える件数(55.9%)が医療外の目的での使用だった。
②およそ1/3(30.4%)が自傷目的によるものだった。
③最も多かったのは15~34歳の医療目的外の使用だった。
④上記③のうち8割程度(82.7%)が他の物質(アルコールや非合法薬物、麻薬等)との併用によるものだった。
つまり、若い世代の他剤も混ぜた自殺目的での使用が多いと言えそうです。
論文中では、上記のような傾向から、ベンゾジアゼピンを使用するときは、自殺企図の既往と他の物質との併用について確認するべきであるとしていますが、少なくとも臨床で経験するのは、一人で受診されて、そのようなことがあっても敢えて伝えてくれないケースではないかと思います。
使い方次第という気もするのですが、本来は慎重に処方すべき薬であると再確認しました。
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