ペットと共に生活することによる、うつや不安への効果は以前から指摘されてきましたが、客観的な根拠には乏しい状況が続いています。
今回は、うつや不安のある単独の地域生活者における、ペット飼育の心理的効果(バイオマーカーを含む)を調べた研究をご紹介します。
精神疾患を持つ成人に対する感情支持動物(ESAs)の効果
気分障害(大うつ病63%、双極性感情障害18%、統合失調感情障害18%)のある11人(平均53.67歳、78%が女性)が研究の対象となりました。
対象者は安定した住居を持ち、単身で、社会的孤立のリスクが高く、低所得、アルコール摂取がなく、暴力の既往がないことが条件とされました。
6人がネコ、5人が犬との共同生活を開始し、定期的な訪問で経過を観察しました。
結果として、以下のことが示されました。
①12ヶ月間で孤独の指標(UCLA Loneliness Scale)が共同生活開始前に比べると明らかに低下していました(59.20→49.90)。
②うつの尺度(Beck Depression Inventory )でも明らかな低下を認めていました(21.09→14.64)。
③唾液中のオキシトシン(親しみの感情を反映)が上昇し、コルチゾール(ストレスの指標)は低下していましたが、統計的な有意差には達しませんでした。
つまり、“うつや不安のある単身生活者が犬やネコとの共同生活を始めると、感情的に支えられ、生物学的な指標でも僅かだが変化が現れる”と言えるかもしれません。
もちろん、動物は心理的な支持を行うための道具ではなく、適切に扱われなればならない共生物なので、心理的支援のための縁組は、ペットを受け入れる側の精神状態の評価や虐待の可能性のないことを確かめた上で、お互いにとって有益である場合に限定されるべきだと思われました。
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