統合失調症の前駆期では気分の落ち込みや閉じこもりなどの抑うつ的症状がメインに生じることが多く、この時期から(薬物療法の有効性に関しては議論がありますが)適切な環境調整を含んだ経過観察を行うことが望ましいと思われます。
今回は、予測が困難と言われる統合失調症への移行について、マシン・ラーニングを用いた診断モデルの効果を調べた研究をご紹介します。
臨床的高リスク患者と近日発症のうつ症状に対する複数マシン・ラーニングの精神病発症予測
平均25.1歳の668人(334人の比較対照のための健常者、334人の患者を含む)が研究の対象となりました。
①医師が診断を行った場合、②定められた診断手続き(アルゴリズム)沿って行った場合、③複数のマシン・ラーニングを用いた場合(臨床的な所見や画像診断などを統合したもの)で、精神病への移行を予測しました。
結果は、以下のようになっていました。
①医師の診断では特異度84.9%、感度61.5%となっており、除外診断(移行しないと診断すること)が上手く行えていましたが、移行する場合の見落としが多くなっていました。
②アルゴリズムでは感度76.0~88.0%、特異度53.5~66.8%となっており、移行するものを見落とさないようにできていましたが、移行しないものも多く含んでしまっていました。
③多くの情報を統合した新しい診断モデルでは感度84.6%、特異度87.3%となっており、両者のバランスが良くなっており、85.9%の割合で正しく精神病への移行を予測していました。
上記の結果から、マシン・ラーニングを用いた多くの情報を統合した診断モデルによって、早期の適切な介入につながる可能性を感じました。
#統合失調症
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