
ダニが仲介する感染症としてライム病が知られていますが、感染後の精神疾患に関する経過については不明な点が多く残されています。
今回は、希少な疾患で多くの資料入手が難しいライム病について、デンマークの全国的データを用いて調査を行った研究をご紹介します。
ライム病と精神疾患や自殺行動との関連
デンマークの全国的データを用いた研究(後ろ向きのコホート研究と呼ばれるデザイン)で、1994~2016年に同国に在住していた約700万人が調査の対象となりました。
ライム病感染の有無や時期によって、精神疾患への罹患・自殺行動への影響を調べました。
結果として以下の内容が示されました。
①ライム病感染がある場合には、精神疾患全体では1.28倍、気分障害は1.42倍、自殺企図2.01倍、自殺による死亡1.75倍となっていました。
②診断からの期間でみた場合、診断後6ヶ月以内で精神疾患全体が1.96倍、診断後3年間で自殺が2.41倍となっていました。
つまり、“ライム病にかかると精神疾患(特に気分障害)にかかる割合や自殺が多くなるかもしれない”ということが示されました。
感染症の中には、発熱や倦怠感・皮膚症状等のよく知られた症状の他に、長期的な精神状態(認知能力)に影響を及ぼすものがあり、感染症の既往には注意する必要性を感じました。
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