不安障害ではしばしば動悸や息切れなどの自律神経症状を伴いますが、その症状発現のしくみについてはあまり分かっていません。
今回は、情報の情動的側面の処理に重要な役割を担っているとされる「腹内側前頭前野(ふくないそくぜんとうぜんや)」の働きと関連付けて、全般性不安障害におけるアドレナリン刺激に対する反応性を調べた研究をご紹介します。
末梢由来のアドレナリン刺激時における自律神経過敏を伴う全般性不安障害と腹内側前頭前野の反応低下
全般性不安障害(以下、GAD)の診断を受けている29人(平均26.9歳)と比較対照として健常者29人(平均24.4歳)が研究の対象となりました。
末梢からの静脈注射からアドレナリン刺激を行う薬剤(イソプロテレノール)か、生理食塩水を投与し、刺激に対する身体の反応とMRIで脳の活動を比較しました。
結果として、以下のことが示されました。
①アドレナリン刺激に対する身体の反応(脈拍数等)や不安のレベルはGADで明らかに高くなっていました。
②GADでは腹内側前頭前野のアドレナリン刺激に対する低反応を認めました。
③腹内側前頭前野の低反応は身体的反応程度と逆相関(一方が大きいともう片方は小さいという関係)を示していました。
つまり、“自律神経の過敏性を伴う全般性不安障害では、アドレナリン刺激に対する反応性が高くなっており、これは脳(前頭前野)の機能低下と関係している”と言えるかもしれません。
このような脳の機能異常が背景としてあることが説明できると、疾患の概念形成に役立ち、患者さんの疾患理解につながると思われました。
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