“持効性注射剤”の古いイメージなのかもしれませんが、副作用が起こった場合に対処が困難であったり、患者さんがあまり薬を飲んでくれないときに選択される等の印象があって、私にとっては積極的に採用しない治療法となっています。
今回は、比較的初期には採用される割合が少ない持効性注射剤を、治療歴の長くない統合失調症の患者さんに使用した時に、入院しなければならないような病状の悪化防止に役立つかを検討した研究をご紹介します。
持効性注射剤と通常の治療に関して入院までの時間を比較した有効性評価
統合失調症に罹患し、抗精神病薬の使用を開始して1年以内の489人(平均25.2歳、55.3%が男性)が調査の対象となりました。
アメリカの39の医療機関が参加し、19施設でアリピプラゾール(抗精神病薬)の持効性注射剤、20施設で通常の治療を行いました。
結果として、持効性注射剤を採用した場合には最初の入院までの日数が長くなっていました(持効性注射剤613.7日 vs 通常530.6日)。さらに一定期間のリスクを示すハザード比では0.56倍、治療必要数(NNT:どのくらいの人数を治療すれば効果が明らかとなるか)では7例の注射剤を採用すると1例は入院を防げる計算となりました。
以上のように、通常初期からは導入されることの少ない持効性注射剤ですが、少なくとも純粋に病状の悪化を防ぐという観点からすると、有効性が高い選択であると思われました。
#統合失調症
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