◎要約:『家庭環境や遺伝的背景が同じであっても、逆境体験は成人期の精神疾患の発症に影響を及ぼしている可能性がある』
子ども時代の虐待などの逆境体験が、その後の精神状態に長期にわたって影響することが指摘されてきました。
しかし、環境や遺伝的な影響を除いて、逆境体験だけの影響を検討することは困難でした。
今回は、双子のペアを対象とすることによって、環境や遺伝的影響を除いた逆境体験の影響を検討した研究をご紹介します。
Adverse Childhood Experiences and Adult Mental Health Outcomes
子ども時代の逆境体験と成人後の精神医学的経過
双子の集団に関しては、スウェーデンの大規模な双子データ25,252人(18~47歳、一卵性と二卵性を含む)を対象としています。
逆境体験には、家族内の暴力、感情的虐待やネグレクト、身体的虐待やネグレクト、性的虐待、性的暴行、ヘイトクライムが含まれました。
結果として、以下の内容が示されました。
・人口全体では逆境体験の数が多いと、成人後の精神疾患が発症する割合が高くなっていました(逆境体験が1つ加わるごとに、オッズ比で1.52倍)。
・双子での比較に関しては、二卵性だとオッズ比は1.29倍、一卵性では1.20倍となっていました。
・特に性的虐待については、人口全体で3.09倍、二卵性双生児の比較で2.10倍、一卵性で1.80倍となってしまいました。
子ども時代の逆境体験が、その他の環境的要因や遺伝的背景とは独立して精神疾患の発症に影響を与えている可能性が確認できる内容でした。
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