◎要約:『子ども時代の逆境体験は概ね全体的な精神的の悪化や認知能力の低下をもたらすが、体験の内容によって出現する影響は異なる可能性がある』
今回は、子ども時代の逆境体験(家庭内の葛藤や個人間の暴力等)がどのようにその後の精神状態や認知能力に影響するのかを調べた研究をご紹介します。
Traumatic and Adverse Childhood Experiences and Developmental Differences in Psychiatric Risk
アメリカにおける継続中の研究 Adolescent Brain Cognitive Development (ABCD) studyを元にした研究で、11,876人(47.8%女性)を対象としています。
逆境体験を家庭内の葛藤、個人間の暴力、地域の驚異的イベント、貧困等のカテゴリに分類し、行動面に外在化する症状や内面の抑うつ等の症状、認知能力への影響の仕方を調べています。
結果として、以下の内容が示されました。
・9~10歳におけるほとんどすべての逆境体験がその後の精神状態悪化、認知能力低下と関連を示していました。
・同年代の他者からの暴力や家庭内葛藤は、思春期初期における外在化する行動面での精神症状と内面的な抑うつなどの症状の両方の増加と関連していました。
・地域の脅威や貧困に関しては、精神的問題(症状)の減少と関連していました(適応が優先された結果と推測)。
・貧困や保護(援助)者の不適応等のリソース減少に関しては、思春期初期の認知能力低下と関連していました。
逆境の種類によっては、(少なくとも表面的に認識される)精神症状の減少につながる場合もある等、出現の仕方に違いがある点が印象的な内容でした。
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