統合失調症やうつ病・双極性障害等、多くの精神疾患で感情の処理が困難となります。
情緒の不安定、感情の爆発等、多くの表現が行われますが、いずれも生活上の支障となりやすく、治療目標として、感情の安定は非常に重視されます。
今回は、多くの精神疾患に共通する症状である感情処理の困難の背景に、どのような脳機能の異常が存在するのか、多くの文献を統合したメタ・アナリシスをご紹介します。
神経疾患に共通する感情処理の神経回路障害
複数の研究のデータを集計し、感情処理の障害がある5,427人と比較対照としての健常者5,491人が分析の対象となりました。
異常に活動が亢進していた部位としては、扁桃体・海馬回・傍海馬回等があげられ、活動が低下している部位としては、内側と外側の前頭前野(特に不快な刺激に対して)がありました。
より大きな領域の“ネットワーク”との関連をみたときには、“顕著性ネットワーク”や“報酬ネットワーク”と呼ばれる脳の広範なネットワークとの関連も示唆されていました。
最近は、脳の一部がどのような働きをしているか、というよりは脳の広範な領域で形成される“ネットワーク”がどのように協調したり、競合したりするのかに関心が集まっており、脳機能に関する論文では、この“ネットワーク”について言及したものが目立ちます。
今回の論文でも、精神疾患を今までの疾患単位としてではなく、症状の背景となる“ネットワーク”の異常として捉えられる可能性が示されていました。
今後はそのような“ネットワーク”という観点からも、精神疾患をみられるようになる可能性を感じました。
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