中等度以上のうつ病に罹った場合には、治療の選択肢として抗うつ薬の使用がすすめられることが多いと思われます。
今回は、臨床試験ではなく、実際の生活の中で抗うつ薬を飲んだ場合と飲まなかった場合の生活の質改善について調べた研究をご紹介します。
抗うつ薬と健康関連の生活の質
医療費に関する調査 the United States’ Medical Expenditures Panel Surveyを元にした研究で、研究期間(2005~2016年)で約1,750万人(平均48.3歳、67.9%が女性)がうつ病と診断されました。
健康関連の生活の質に関する質問票(HRQoL)を用いて、抗うつ薬の服用の有無と生活の質改善の程度について比較しました。
結果として、以下の内容が示されました。
①抗うつ薬の使用は、僅かですが精神面での生活の質改善に関連していました。
②しかし、身体面・精神面両方で統計的に明らかな改善は認めていませんでした(身体面のPCSで–0.35 vs. –0.34、精神面のMCS で1.28 vs. 1.13)。
つまり、“抗うつ薬使用による生活の質改善は、精神面でわずかに認めるが、統計的に意味を認めるほどではないかもしれない”と言えそうです。
しかし、ここでは(臨床試験とは異なり)うつ病の程度のについてのコントロールがなされていません。抗うつ薬服用を行う場合にはうつ病の程度がより重度で、生活の質が低下しやすいことを考えると、解釈に慎重さを要する結果であると思われました。
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