統合失調症や気分変動の大きい場合などに使用される抗精神病薬には、副作用として抗コリン作用(自律神経のバランスの偏りを生じる作用)が比較的強いものが存在します。
今回は、抗コリン作用が強い抗精神病薬を使用した場合、認知能力にどのような影響を及ぼすのか調べた研究をご紹介します。
統合失調症における抗コリン作用関連の認知障害
アメリカにおける横断研究と呼ばれる研究デザインで、統合失調症あるいは統合失調感情障害(大きな気分変動と精神病症状を伴う疾患)に罹患している1,120人が研究の対象となりました。
服用している薬剤について、抗コリン作用の合計を Anticholinergic Cognitive Burden (ACB) と呼ばれる尺度で測定し、認知機能テストの結果との関連を調べました。
結果として以下の内容が示されました。
①抗コリン作用による負担(ACB)が大きいと、認知機能テストの結果が広い領域で低下していました。
②この結果は、年齢や疾患の重症度による影響などを調整した後でも明らかでした。
つまり、“抗コリン作用が強い薬剤を服用していると、認知機能全般の低下を来しやすく、これは疾患の重症度とは関係なく起こる”と言えそうです。
認知機能への影響という観点からは、(治療効果がほぼ同等ならば)より抗コリン作用の少ない選択を行うほうが望ましいと考えられました。
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