統合失調症の原因は遺伝子のような生来性のものだけではなく、環境の要因等が複雑に絡み合って生じると言われます。
影響する遺伝子も多数が指摘されており、どれが決定的というわけではなく、“発症に影響する要素(リスク・ファクター)“として示されています。
今回、新たに統合失調症の発症に深く関与すると思われる遺伝子“PCDHA3”の変異が発見されたのでご紹介します。
新たに発見された希少なエクソン(遺伝子)変異により、統合失調症におけるカドヘリン(細胞同士の接着に関与する糖蛋白)の役割が示唆された
786人の統合失調症罹患者と463人の健常者が研究の対象者となりました。
これらの対象者は、遺伝子の全体的な均一性を高くして、注目するべき遺伝子を発見しやすいようにアシュケナージ系(ユダヤ人)という集団に絞られました
全遺伝子の検索を行う研究として対象者数は少なめですが、この対象を絞った点がこの研究デザインのポイントとなっています。
結果として、786人の統合失調症罹患者のうち3人で、“PCDHA3”という細胞同士の接着や情報伝達に関与する遺伝子の変異が見つかりました。
そして、この遺伝子変異は健常者では全く見つかりませんでした。
たった3人?と思われるかもしれませんが、統合失調症3人と健常者0人というのは差異として非常に大きく、この遺伝子は少なくとも今回の例においては発症に大きな役割を果たしていると考えられました。
以前に行われた別の遺伝子調査データにおいて確認したところ、新たに2人のPCDHA3変異が見つかり、やはり健常者ではみられませんでした。
この遺伝子変異自体がすべての統合失調症のしくみを説明するというわけではありませんが、このように“カドヘリン”と言われる細胞同士の接着に関与する遺伝子が統合失調症の発症に大きな影響を与える可能性を示唆する研究として今後大きな影響をもつ可能性を感じました。
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