
昨日は、補聴器による聴覚援助によって認知機能の低下は抑制される(低下のカーブはゆるやかになる)のかという内容をご紹介しました。
今回は、加齢による視力低下の一因となる白内障について、手術を受けることでどのように認知症低下が影響を受けるのか調べた研究をご紹介します。
白内障手術と加齢による認知能力低下
イギリスの大規模な調査である English Longitudinal Study of Ageing (ELSA) のデータを元にした研究です。
白内障手術を受けた2,000人あまりの人々と比較対象としての約3,600人が分析の対象となり、分析の際には背景要因の調整のため傾向スコア(propensity score)が用いられました。
結果として、以下の内容が示されました。
①エピソード記憶の評価と白内障手術とは正の関連を示していました。(関係の強さを示す尺度であるβ=4.23)
②エピソード記憶は加齢とともに低下していましたが、白内障手術の後では低下のカーブが緩やかになっていました。(上と同様βで示すと-0.1⇒-0.05と変化)
つまり、“白内障手術は記憶の改善に役立ち、年齢とともに低下していく記憶力のカーブをゆるやかにするかもしれない”と言えそうです。
視覚は、聴覚と比較してさらに情報量が多く、脳への刺激も大きくなることが予想されます。できるだけ視力を保つことが生活の質や認知能力低下を予防する観点から重要であると思われました。
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