様々な薬剤が本来の目的以外の部分で効果を発揮することがあります。
抗てんかん薬が気分安定薬として、抗うつ薬が鎮痛のために使用される等、中には新しい使用法が標準的に認められるようになったものもあります。
今回はすでに白血病の薬剤として使用されている“サルグラモスチム”のアルツハイマー病に対する有効性について調べた研究をご紹介します。
アルツハイマー病の治療におけるサルグラモスチムの安全性と有効性
軽度から中等度のアルツハイマー病に罹患した40人が対象となりました。
二重盲検(投与する方もされる方も実薬・偽薬を知らない方法)で、ランダムに実薬(サルグラモスチム)を投与するグループと、偽薬を投与するグループに分けて、安全性や効果を確認しました。
3週間の服用期間があり、45日後、90日後に、認知機能や血中の物質濃度測定、画像検査等を行いました。
結果として以下の内容が示されました。
①治療終了時と45日後の両方で、サルグラモスチムの方が認知機能が高くなっていました(MMSEという認知機能の尺度で1.8ポイント程度)。
②血液データの差としても両グループで差が出ていました。アルツハイマー病で低下するアミロイドβ40が正常に近くなり、アルツハイマーで増えるタウ蛋白等の物質が低下していました。
③副作用には皮膚症状や消化器症状がありましたが、従来から予想されているレベルの内容でした。
つまり、“サルグラモスチムは短期間でもアルツハイマー病の認知機能と血液データの改善をもたらす”可能性が示されました。
MMSEで2点ぐらいの差は、もしかすると実生活ではあまり変化を感じない可能性がありますが、短期間の変化としては大きいといえるかもしれません。
今後、アルツハイマー病の病状を改善する可能性のある薬剤として非常に注目される内容であると思われました。
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