
これまでに、認知症と睡眠障害の関連については多くの証拠があります。
しかし、「関連」といった場合には因果関係を示すわけではなく、認知症⇒睡眠障害の場合もあれば、睡眠障害⇒認知症もあり得ますし、あるいは随伴しやすい要因が影響を与えているだけで、因果関係はないかもしれません。
今回は、“メンデルランダム化”という遺伝子多型を用いたランダム化を行い、大規模なデータを分析することで因果関係の方向について検討した研究をご紹介します。
Sleep, major depressive disorde r and Alzheimer's disease
A Mendelian randomisation study
睡眠、うつ病、アルツハイマー病に関するメンデルランダム化研究
現在までに行われた大規模な遺伝的研究(UK Biobank N = 446,118, the Psychiatric Genomics Consortium N = 18,759, and the International Genomics of Alzheimer's Project N = 63,926)からデータを入手しました。
結果として、以下のような内容が示されました。
①アルツハイマー病の高リスクと“朝型人間”であること、睡眠時間が短いことは関連している。
②アルツハイマー病は睡眠パターンに影響を与えるが、睡眠パターンの異常によってアルツハイマー病が引き起こされているわけではない。
③うつ病については、アルツハイマー病との因果関係は明らかではない。
つまり、因果関係について今回調べた結果では、アルツハイマー病が睡眠障害を起こすことはあり得るけれどもその逆はない、ということになります。
脳の活動を健全に保つために適切な睡眠時間をとることは必要ですが、睡眠時間が短いからと言って直接的にアルツハイマー病の発症に影響を与えることを心配する必要はなさそうです。