精神的活動の多寡が認知機能に影響することが繰り返し指摘されてきました。
今回は、対人的交流の有無(社会的に孤立しているか)等が認知症と関連しているかを調べた研究をご紹介します。
社会的孤立・孤独と認知症の関連
イギリスの大規模な生体データ(UK Biobank)を用いた研究で、462,619人(平均57.0歳、追跡期間平均11.7年)が対象となりました。
「社会的孤立」については、他者と一緒に済んでいるか、最低月に1回の訪問を受けるか、社会的活動に参加しているかと質問し、2項目以上で否定の回答なら「社会的孤立」と判断されました。
「孤独」については、孤独感を感じるか、最低月に1回は他者との交流(打ち解けて話す等)を行っているかと質問し、両方とも否定の回答なら「孤独」と判断されました。
結果として、以下の内容が示されました。
①「社会的孤立」は他の要素を調整した後でも、認知症と関連していました(ハザード比1.26倍)。
②「孤独」は他の要素を調整した後では、認知症のハザードには大きな影響を与えておらず(ハザード比1.04倍)、その75%はうつ病の有無によって影響を受けていました。
③社会的孤立がある場合には、前頭・側頭・海馬等で灰白質の体積が低下していました。
④社会的孤立で生じた灰白質の体積減少は、アルツハイマー病で発現低下の見られる遺伝子との関連を示していました。
つまり、“「社会的孤立」は他の要素とは独立に、認知症の発症に関連し、それは脳の体積減少や遺伝子の発現低下によっても確かめられる”と言えそうです。
「社会的孤立」について、うつ病(状態)等とは独立に認知能力低下の危険因子として認識する必要性を感じました。
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