糞便移植による腸炎の治療結果

糞便を移植し慢性的な下痢などを治療する方法(糞便移植)は、動物医療の世界では長い歴史を持っています。
しかし、人間に対してはあまり知名度が高い方法とは言えないかも知れません。
他の理由による抗生剤の使用で通常の腸内細菌分布が乱れたときに起きやすいクロストリジウムによる腸炎では、抗生剤などによる治療が効果をあげにくい場合があるため、腸内の細菌分布を正常化させるために糞便移植が行われる場合があります。アメリカではそのための糞便銀行stool bankも存在します。
今回はアメリカで行われている糞便移植による腸炎の治療成績を調べた研究をご紹介します。
糞便腸内細菌移植は実臨床で高い有効性を持っている
20施設から集めた259人分の資料(1ヶ月の追跡が222人、6ヶ月の追跡が123人)が分析の対象となりました。
北アメリカのクリニックで糞便移植を行った例が登録され、治療成績や安全性に関するデータがオンラインで集められました。
結果として、以下の内容が示されました。
①200人(90%)では1ヶ月後で腸炎が治癒していました。そのうち、197人(98%)では糞便移植は1回のみでした。
②副作用として下痢(5人:2%)、腹痛(4人:2%)等があり、糞便移植に関連すると思われる入院が3人:1%でした。
つまり、“クロストリジウムによる腸炎に対して、糞便移植は有効な方法の一つであり、重い副作用は少ない”と言えそうです。
便を移植するというイメージに違和感があるかも知れませんが、腸内環境を整えるための方法の一つとして有益な細菌を含む糞便の移植が有効である可能性が考えられました。