以前から、聴覚の衰えが認知能力低下に関連するのではないかという指摘があります。
今回は、より大きな規模で、特に実生活に近い環境での聞こえの低下を反映すると思われる“speech-in-noise (SiN) hearing impairment:ノイズの中での会話を聞き取る能力の障害”と認知能力低下との関連を長期の経過で調べた研究をご紹介します。
ノイズ中会話聴取力の障害と認知症発症の関連
イギリスの大規模データ(the UK Biobank)を元にした研究で、60歳以上の82,000人のデータが分析の対象となりました。
11年間の経過観察期間で、このうち、1,285人が認知症を発症しました。
結果として、以下の内容が示されました。
①聴取力が“不十分 insufficient”のレベルでは認知症発症のリスクが正常の場合に比較して61%上昇していました。
②聴取力が“乏しい poor”のレベルでは認知症発症のリスクが正常の場合に比較して91%上昇していました。
つまり、“日常生活で実感される聴覚の低下が大きい場合には、10年間の経過でおよそ2倍認知症の発症が多くなるかもしれない”と言えそうです。
まだ、必ずしも因果関係の明らかなリスク要因ではありませんが、情報の摂取やコミュニケーションに明らかな支障がでる障害なので、大きな影響を直接的に与えている可能性が大きいと思われました。
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