昨日は、日常生活で実感される聴覚の低下が、10年程の経過でみた認知症発症と関連しているのではないかという内容をご紹介しました。
今回は、かなり以前の論文(2018年)になりますが、補聴器などの聴覚援助を用いた場合には、どのように認知能力低下のカーブが変化するか調べた研究をご紹介します。
聴覚援助と認知機能の経年的変化
中年から老年期にかけての健康状態に関する大規模な調査: the Health and Retirement Study (HRS)のデータを元にした研究で、50歳以上の2,040人が分析の対象となりました。
1996年~2014年の2年毎の認知機能を評価し、その変化の軌跡を調べました。
結果として、以下の内容が示されました。
①聴覚援助を使用することはエピドード記憶の改善と関連していました。(関係の強さの目安である統計量β=1.53)
②認知能力の低下は聴覚援助を用いる前の低下に比べて、聴覚援助を使ったほうが緩やかになっていました。(上と同様にβが-0.1⇒-0.02に変化)
つまり、“補聴器を使う前には急な坂道をくだるようだった認知能力低下が、補聴器を使うとゆるやかになるかもしれない”と言えそうです。
補聴器の使用は、生活の質を全体的に改善するためにも役立つので、経済的なご負担や煩わしさはあるかもしれませんが、望ましい予防手段であると考えられました。
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