ある部分(系)に存在している蛋白質の全体的状態(総体)を調べ、それを「プロテオーム」と呼称することがありますが、それにより細胞の状態に関する情報を得られることがあります。
今回は脳の背外側前頭前野:dorsolateral prefrontal cortex (DLPFC)のプロテオームを調べることで、認知的な抵抗力(回復力)と関連する要因を調べようとした研究をご紹介します。
地域に住む高齢者における認知的抵抗力と関連する皮質蛋白
地域に住む391人の高齢者(273人が女性、開始時点で平均79.7歳)が調査の対象となりました。
「認知的抵抗力」を、様々な病理的要素(一般に認知症になりやすいと言われている条件)があるにも関わらず認知機能の低下を来さない能力と考え、プロテオームの分析を行いました。
結果として、8つの蛋白成分(NRNニューリチン1, ACTN4, EPHX4, RPH3A, SGTB, CPLX1, SH3GL1 )が「抵抗力」に関連し、逆に1つの蛋白(ユビキチン活性化酵素UBA1)が「脆弱性」に関連している(少ないほうが抵抗力が高くなる蛋白)と思われました。
これだけでは、どのように有益な情報なのか分かりませんが、このような蛋白成分からのアプローチで「認知的抵抗力」についての謎が解けると、新たな治療目標となる可能性が考えられました。
#認知症
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