生体内の機能を担うさまざまな物質について、総合的・網羅的に研究する学問分野のことを“マルチオミクス”と言います。
(コトバンク→https://kotobank.jp/word/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%83%81%E3%82%AA%E3%83%9F%E3%82%AF%E3%82%B9-2434281より)
最近、大規模データをこのような学際的なアプローチで分析した論文が増えていますが、観察研究では分からない因果関係の推定に役立つことがあります。
今回は、今までにも指摘されてきた脳の構造的特徴とアルコール使用との関連をマルチオミクス的視点から調べた論文をご紹介します。
Association Between Brain Structure and Alcohol Use Behaviors in Adults
A Mendelian Randomization and Multiomics Study
成人における脳の構造とアルコール使用との関連:メンデルランダム化とマルチオミクス研究
イギリスの大規模データ(UK Biobank)を元にした研究で、763,874人(女性52~54%、年齢40~63歳、94%が欧州民族)を対象としています。
メンデルランダム化という手法で、脳の構造データとアルコールの使用習慣や他の要素との関連を調べ、マルチオミクスの視点からその関連に影響する要素を推定しています。
結果として、以下の内容が示されました。
・全体の脳皮質厚とアルコールの使用にはネガティブな関連(脳の皮質厚が薄いほうが、アルコールの使用が多いという関係)がありました。
・この関連には 17q21.31 の遺伝子とグルタミン酸作動性の神経細胞が寄与している可能性が考えられました。
要約:『脳の皮質が薄い方が、アルコールの乱用が生じやすく、この関係には遺伝的特徴やグルタミン酸作動性神経の寄与が推定される』
アルコールの乱用に繋がりやすい脳の構造的特徴があるのかもしれないと思われる内容でした。
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