脳波測定中の刺激に反応した電位変化のことを“事象関連電位”と言いますが、統合失調症では、事象関連電位が低下するという指摘があります。
今回は、統合失調症等の精神病性疾患の診断基準は満たさないまでも、精神病性の症状を呈している状態(以降、“ハイリスクグループ”と表記)で、上記のような事象関連電位の低下が、その後の経過を予測するのか調べた研究をご紹介します。
臨床的ハイリスクグループにおける聴覚刺激に対する反応低下と精神病性疾患の危険性
ハイリスクグループ580人(平均19.24歳)と健常者241人(平均20.33歳)が対象となりました。
脳波を測定し、事象関連電位の特徴とその後の精神病性疾患への移行との関連を調べました。
結果として、一部について事象関連電位の反応低下と症状の悪化は関連を示していましたが、薬剤の服用の有無にも影響を受けており、全体としての関連は明らかではありませんでした。
つまり、“脳波測定で分かる事象関連電位の反応性は、一部症状の悪化を予測するが、臨床的に参考になるほどではない”と言えそうです。
今後、さらに統合失調症などの精神疾患への移行を予測する客観的検査が発見されることが期待されました。
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