◎要約:『高齢者の手術で脳波モニターを行って、脳波の抑制を最小限にしてもせん妄のリスクは変わらないかもしれない』

手術後に幻覚などの精神症状を伴う意識障害(せん妄)を伴う場合があります。
今回は、高齢者を対象として、脳波の様子を見ながら手術を行うことで、せん妄の頻度が減るのか調べた研究をご紹介します。
Electroencephalography-Guided Anesthesia and Delirium in Older Adults After Cardiac Surgery
The ENGAGES-Canada Randomized Clinical Trial
循環器手術後の高齢者に関する脳波計ガイドのある麻酔とせん妄
循環器疾患の手術を受ける高齢者1,140人(平均70歳、24.7%女性)が対象となりました。
脳波の抑制が最小限となるように術中にモニターを行った場合と、そうでない場合とでせん妄の出現率などを比較しました。
結果として、以下の内容が示されました。
・術後5日間のせん妄の出現率は、脳波ガイドありで18.10% vs 脳波ガイドなし18.15%であり、統計的に明らかな差異はありませんでした。
・集中治療室への滞在期間、入院期間、手術合併症、死亡率でも明らかな差異は認められませんでした。
今回の研究からは、脳波の観察によって麻酔を調整することのメリットが見えにくい結果となっていました。
Comments