少なくとも日本では、うつ病の治療を薬物中心で行うのがまだ標準的となっています。
症状の特徴を検討し、医学的な証拠と経験を元に、適切と思われる薬剤を選択しますが、必ずしも有効とは限りません。
2回、3回と薬剤変更を繰り返したり、試行錯誤を繰り返しても、結局明らかな改善を認めない場合があります。
このような治療効果の予測が困難であることが、病状そのものに加えて、うつ病の治療過程をさらに困難なものとしています。
今回は、エスシタロプラムという代表的な抗うつ薬に対する効果を「機械学習」を利用した脳波データの分析によって予測できないか調べた研究をご紹介します。
エスシタロプラムによる治療効果を機械学習を用いて予測する
うつ病に罹患した122名が調査の対象となりました。これらの対象者に8週間の抗うつ薬(エスシタロプラム)による治療を行い、症状の指標で50%以上の改善を「効果あり」と判定しました。
”サポートベクトルマシン”という予測に必要な方向性を持ったデータを分析する手法(機械が認識を行うモデル)を用いた分類で、脳波データを分析しました。
結果として、当初の122名のデータでは79.2%、治療開始から2週間後の脳波データが得られた115名については82.4%の正確さで効果のある/なしを判定できることが示されました。
このような機械学習の進歩により、データの有用な活用ができることは患者さんにとって大きな利益につながると考えられました。
特に抗うつ薬の選択を正確に行うことには困難を伴うことも多く、脳波のような比較的実施の容易な検査データで上記のような予測ができれば、薬剤選択へのインパクトは非常に大きいものになると思われました。
#うつ病
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