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認知症に対する包括的ケアの効果

執筆者の写真: もりさわメンタルクリニックもりさわメンタルクリニック

以前から、複数の医療機関や介護等のサービス提供機関と地域に根付いた組織を結びつけて認知症のケアを行う“包括的ケアシステム”の必要性が説かれています。


今回は、特にそのような“包括的ケア”の中でも、電子カルテの共有によるニーズ把握/状態評価やきめ細やかな個別の支援計画等を含むモデル的プログラムで、どのように患者さんや介護者の状態が変化し、臨床経過に影響するのか調べた研究をご紹介します。


包括的認知症ケアプログラムによる患者と介護者の利益


認知症に罹患した554人とその介護者が調査の対象となり、プログラム開始前と1年後の変化を調べました。


患者本人については Mini‐Mental State Examination (MMSE)といった認知機能や日常生活動作等に関する指標、介護者についてはModified Caregiver Strain Index(修正版介護者負担指標)等が用いられました。


“包括的ケアプログラム”を開始した1年後において、患者本人については純粋に認知や機能的評価を行うMMSE等以外でのスケールでは改善を示し、介護者については全ての指標で明らかな改善を示していました。


多くの指標を合わせて総合的に評価した臨床的結果については、患者の314/543 (58%)、介護者の282/447 (63%) が利益を受けたと考えられました。


認知症治療における包括的ケアを実施する時に、重要なのは“連携”にいかに時間と労力を割くかという点であると思われます。


時間的制約の強い日常診療の中で、そのような“連携”を十分に取り入れることは必ずしも容易ではありませんが、患者さんと介護者に対する利益の大きさが立証されていることでもあり、取り組みを続けたいと思いました。

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