身体的影響を考えると、高齢者への薬物療法はできるだけ避けたいところです。
特に認知症に罹患されている患者さんで、行動心理兆候(周辺症状)が著しい時には、施設や家庭への適応を維持するため、あるいは苦痛を軽減するためにベンゾジアゼピン類等の薬剤を使用せざると得ないことがあります。
今回は、アルツハイマー病の患者さんに睡眠薬や抗不安薬(ベンゾジアゼピン類)を使用した時に認められる死亡率の変化について調べた研究です。
アルツハイマー病患者におけるベンゾジアゼピン類の使用開始と死亡リスク
フィンランドの住民に関する研究で、2005年~2011年にアルツハイマー病と診断された70,718人に関するデータが使用されました。
このうち、診断後にベンゾジアゼピンや類似物質の使用を開始した1,038人に関して、性別や年齢、診断からの時間の条件を一致させた参加者を比較対照としたところ、使用を開始した場合にはそうでない場合に対して死亡リスクが1.41倍高くなっていました。
この死亡リスク上昇がどのような原因によるのかまでは不明ですが、臨床医学から考えると、ふらつきによる転倒⇒骨折⇒寝たきりの状態⇒筋力低下、嚥下機能低下、意欲低下等の廃用症候群や、過剰な鎮静⇒嚥下機能低下、筋力低下、食欲低下……等のしくみが考えられます。
薬物治療がないとごく短期にご本人や周囲の方たちの生活が破綻するのではないかというような例もありますが、上記のような死亡リスクも含め、身体的影響を常に意識する必要性にを感じました。
#認知症 #睡眠薬
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