◎要約:『高齢期において精神的な回復力(レジリエンス)が高いと、身体的に脆弱な状態に陥っても、その後の回復が認められる可能性が高くなるかもしれない』
今回は、高齢者における精神的な回復力や抵抗力(レジリエンス)と脆弱性や衰え(フレイルティ)の関連を調べた研究をご紹介します。
ここでは、主として「(精神的)レジリエンス」と「フレイルティ」という言葉が重要で、精神的レジリエンスは「危機に直面しても精神的、感情的に乗り切る能力、または早期に元の状態に戻る能力」を意味し、フレイルティは「健康な状態と要介護状態の中間的な状態像で、普段予備として維持している身体的能力が低下することによって起こる障害に陥りやすい状態のこと」であると思われます(ウィキペディアの訳に基づき、一部改変)。
Psychological Resilience and Frailty Progression in Older Adults
高齢者における精神的レジリエンス(回復力・抵抗力)とフレイルティ(脆弱性)の進行
中国の上海における研究で、一般地域に住む高齢者4033人(平均71.0歳、56.0%女性)が対象となりました。
3年間の経過観察で、当初のレジリエンスとその後のフレイルティの進行状態との関連を調べています。
結果として、以下の内容が示されました。
・全体として、3年間のフレイルティの経過は「改善」が28.3%、「安定」が29.8%、「悪化」が41.9%となっていました。
・当初のレジリエンスの高さとその後のフレイルティの進行状態には強い関連を認め、当初のフレイルティが高いと、その後の「改善」の割合が高くなる傾向(オッズ比1.28倍)がありました。
・レジリエンスとフレイティの関連は、当初のフレイルティが強い時ほど、はっきりとしていました。
高齢期において、身体的にフレイルティ(脆弱性)を予防する対策と同時に、精神的なレジリエンス(回復力)を保つ必要性を感じる内容でした。
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