高齢者への抗精神病薬投与に関する注意で生じた影響


認知症を伴う高齢者に高度の妄想や暴言・暴力等が認められ、家庭や施設への適応に大きな支障を来した時に、「抗精神病薬」と呼ばれる本来は主として精神病症状に使われる薬剤を少量使用する場合があります。


この抗精神病薬の使用は、転倒や骨折、誤嚥や肺炎の発症を多くするとして注意が促されてきました。


特にFDA(アメリカの食品や薬品の管理を行う機関)で行った「注意(Boxed Warning)」がどのような影響を及ぼしたかを調べた研究をご紹介します。


Association of the US Food and Drug Administration Antipsychotic Drug Boxed Warning With Medication Use and Health Outcomes in Elderly Patients With Dementia

FDAが行った認知症への抗精神病薬使用に関する注意喚起がもたらした影響について


抗精神病薬等の薬剤使用量や転倒・骨折の有病率、2年間の死亡率、その他の健康に関する問題に関する12項目について、注意喚起が行われた2005年以降の変化が調べられました。


結果として以下の内容が示されました。

① 問題にされた非定型抗精神病薬の使用、脳血管障害のイベント、転倒や骨折は減少していました(例:転倒や骨折で-1.72⇒-0.40%)。

②他の薬剤(麻薬性鎮痛剤や抗てんかん薬)の使用、心臓血管障害のイベント、2年間の死亡率は増加していました(例:2年間の死亡率-0.68⇒0.18%)。


つまり、確かに転倒や骨折は減っていますが、代わりに他の薬剤を使ったり、何らかの要因で死亡率が高まるなど、全体として高齢者の福祉に貢献したかは疑問の結果となっています。


どのようなしくみで上記のような結果となっているのか、さらに研究が必要ですが、良い影響を及ぼすはずの注意喚起が、他の面ではネガティブな影響を与えている可能性が考えられました。


#高齢者 #認知症

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