処方行動と自殺の関連


薬物療法を行うとき、どんな単純な処方を行うときでも悩みます。もちろん、薬を飲んでいただいて、起こる可能性のある事柄のうち、良いこと(作用)のほうが、悪いこと(副作用)よりもずっと大きいと判断するからこそ、処方に踏み切るわけですが、それでも悪いことが起こる可能性はゼロではありません。

今回は、薬剤に特有の副作用ではなく、ある処方パターンと臨床的現象との結びつきに関する研究をご紹介します。

the European Journal of Clinical Pharmacologyという医学雑誌で発表された高齢者を対象とした研究なのですが、結論の一部を抜粋します。

“Switching antidepressants, as well as concomitant use of anxiolytics or hypnotics, may constitute markers of increased risk of suicidal behaviours in those who initiate antidepressant treatment in very late life.”(抗うつ薬の処方変更は、抗不安薬や睡眠薬との併用と同じように、老年期に抗うつ薬治療を開始した人々における自殺の危険性増大の指標となるかもしれない)

訳の不味さも手伝って何を言っているのか分からん!……となってしまい、申し訳ないのですが、要するに高齢者の「抗うつ薬変更」という処方行動は自殺の危険性を増すかも? という意味なのでしょう。

しかし、これは「ちょっと待ってください!」という内容なのです。これを読んで、抗うつ薬の変更は高齢者では良くないらしいから、効果のない場合でも変更はやめておきましょう……こうはならないと思うのです。

さすがにこれは「ん?」と思いながら読んでみると、やはり当然のように想定されるbias(バイアス):結果に影響を与える他の因子について書かれていました。

これは抗うつ薬の変更という処方行動自体が問題なのではなく、処方を変更せざるを得ないほどうつが重篤であるという背景が問題である可能性があると。

「可能性がある」というか、普通はそう解釈するような気がします。

でも、このような処方行動のパターン自体に注目する研究は少なく、それぞれの薬剤の作用のみでなく、処方行動のスタイル自体にも患者さんに影響を及ぼす要因がないか調べることは非常に意義深いらしいのです。

この論文の解釈には様々な意見がありそうですが、自分の行っている処方行動のパターン自体にも自覚的でありたいと思わせる内容でした。


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