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うつ病診断・治療に関する技術の進歩


昨日に引き続いて日本精神神経学会に来ています。

今日はうつ病診断・治療の比較的新しい技術に関する2つのシンポジウムで学ばせて頂きました。

1つは光トポグラフィー検査(fNIRS)で、神経生理学を応用し、大脳皮質の反応性を可視化(目に見えるように)することによってうつ病の診断補助に役立つものです。

かなり以前になりますが、NHKの特集番組でも大きく取り上げられたことがあり、被験者の方がコードの付いた帽子のようなものを被っている姿を記憶されている方もいらっしゃると思います。

あらゆる疾患について数値で分かる・目で見て分かる検査が求められる傾向があります。

精神医療では特にこの「数値化」、「可視化」が遅れており、多くの批判を受けてきました。

今回の光トポグラフィー検査(fNIRS)の保険適応はあくまでもうつ病についての「鑑別診断(他の疾患と見分けること)補助」ということであり、症状を詳しく評価した臨床的診断に代わるものではありませんし、これを根拠として「うつ病である」という診断はできない技術ではあります。

しかし、疾患の理解を開かれたものにするために、あるいは疾病診断の「手ごたえ」のようなものを共有するために、可視化のためのツールは欠かせないと思います。

もう1つは、反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)です。

ガイドラインには「変動磁場を用いて脳皮質に渦電流を誘導し、ニューロンを刺激することによって、低侵襲的に大脳皮質や皮質下の活動を修飾することができる技術である」と書かれています。

大雑把な説明を加えると「磁気の力で脳の活動を変化させる」→「うつ病が良くなる」ということを期待して使用する技術です。

私もテレビで、何年も難治性のうつで苦しんでいた外国の男性がこの療法で改善していたのを見て、一刻も早く日本でも可能になれば良いと望んできました。

日本精神神経学会のガイドラインによれば、対象となるのは「既存の抗うつ薬による十分な薬物療法の効果が認められない成人のうつ病患者」であり、双極性障害や軽症うつ病エピソード、持続性気分障害は適応にはなっていません。

しかも、現在はまだ保険適応とはなっておらず、4週間程度ほぼ毎日1回約40分(やり方は病態や施設によって異なる可能性があります)、高額な費用を払って行う必要があります(現状では、一部の病院やクリニックで自費や研究目的で行われています)。

そして、ガイドラインの資料では寛解(長期間症状の目立たない状態が続くこと)が得られる割合は15%となっています。

よって、「高い確率で」患者さんの負担に見合った効果が得られるという説明はできません。

しかし、それでも長期に渡る難治性の病態を治療する上で大きな選択肢になることは確実であると思われます。

以上2つとも、残念ながら当院ですぐに導入を検討している技術ではありません。

しかし、特にTMSについては、小さなクリニックでも重い病態への治療の選択肢を準備する責務がある(もちろん副作用への対応を医療連携等で可能にして行うべきであると思われますが)という認識はあります。

今後の課題と考えております。

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