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アルコール依存症への心理療法


以前に禁煙を目的として行う心理療法について書いたことがありました。

そこでは、怒りの制御を学ぶアンガーマネジメントを加えると、通常の禁煙プログラムよりも、禁煙が成功する割合がぐっと良くなるという結果でした。

そのように、依存症に対するアンガーマネジメントの効果は多くの研究で確認されています。

今回は、依存症の中でも非常に多いアルコール依存症に対して、通常のミーティングによる療法(AAF: Alcoholics Anonymous Facilitation treatment)とアンガーマネジメントによる療法(AM: Anger Management Treatment)を比較した論文を取り上げます。

アンガーマネジメント療法のアルコール依存症への応用: アルコール依存症に対する革新的心理療法のランダム化比較試験

J Subst Abuse Treat. 2015 December; 59: 83-93.

従来からアルコール依存症に対して定評のある心理療法として、AA(Alcoholics Anonymous)が勧められてきました。これはアルコール依存症に苦しむ方たちが飲酒を止めたいという願いをもって集まり、自分たちの経験を分かち合うことを目的とするミーティング活動を中心とする団体です。

日本でもAAは広がっており、他にミーティングを中心に活動する団体として断酒会が有名で全国各地に支部が存在します。

今回の論文はアルコール依存症の外来患者に対して、上記のように従来から効果の確かめられているグループ療法とアンガーマネジメントを比較しようとしたものです。

結果としては……両者で大きく効果に差はありませんでした。両者とも飲酒を止めることに効果が高く、両者とも怒りの制御に効いていました。

アンガーマネジメントがより優れていたわけではないのですが、従来から認められているやり方とほとんど同じくらいの効果を認めたことより、怒りに焦点を当てて行う心理療法(アンガーマネジメント)がアルコール依存症に対しても有効であることが確認できたとしています。

また、アンガーマネジメントを行ったグループにおいては怒りの程度を示す指標と飲酒行動とが関連しており、怒りの制御に注目することが有用であることを示しています。

このようにアンガーマネジメントが、様々な依存症に有効であることをみると、依存症は感情の病気であるということが言えるような気がします。

正確な言い方ではなくなってしまうのですが、感情を制御すること、つまり気持ちが救われるようにすることが依存症改善への道の一つであるということが言えそうです。依存症の治療というと、表面的な依存対象を求める行動に目が向いてしまうのですが、その根底にある気持ちや感情への配慮を忘れてはいけないと確認できた内容でした。

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