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“水中毒”の症例について


昨日に引き続いて、もう少し“水中毒”の病態を紹介させてください。

患者さんの生活の状態に気を配ってさえいれば、この病気が重たい結果を生ずることはまれではあります。しかし、まれではあっても時々、意識障害まで来すような緊急の対応を要する場合を経験するので、もう少し詳しく書かさせて頂きたいと思います。

それと、脱水とともに、この状態が頭にあるだけで、予防できる病気なので、もう一度具体例を示しておいた方が良いように感じます。

外国の医学雑誌(British Medical Journal)に発表された症例報告で、自分が全く同様の(横紋筋融解を合併した)“水中毒”を経験したので、印象に残っている内容です。

水中毒に合併した横紋筋融解とそれに関連する低ナトリウム血症

簡単に冒頭の部分を要約させてください。

「双極性障害の39歳の男性が、けいれん発作と意識障害を来して入院した。彼は最近数か月、毎日8~10Lのダイエット・コークを飲み、15~20杯のコーヒーと数杯の水を数分おきに飲んでいた(コーヒーについては多すぎる気がするのですが、このようにしか訳せませんでした)。この期間ずっと繰り返す頭痛を訴え、鎮痛薬を服用していた。入院した日、混乱と興奮を認め、5分間の全身性のけいれんが目撃されていた。その他に症状はなく、この時期のアルコール飲用や頭部外傷の既往(それまでに罹った病気)もなかった。彼は双極性障害を患い、日に6㎎のリスペリドン(日本でも非常に良く使われる抗精神病薬)と1500㎎のバルプロ酸ナトリウム(気分安定薬)で治療されていた。」

この後、彼は低ナトリウム血症に、稀な病態として横紋筋融解症(筋肉が解けてしまう状態)を合併し、呼吸障害と腎障害のため1週間以上、集中治療室での治療を受けました。幸い呼吸や腎臓の働きも改善し、11日目には通常の病棟に戻ることができました。

目の前の患者さんがこのような状態を示した時、「何かがおかしい」と思わず、生活の様子について詳しく聞いていなければ、単なる精神症状の悪化や偽けいれん(心因性に出現したけいれん)と考えて、検査結果が出るまで様子をみてしまうかもしれません。

このような稀有だけど重い結果をもたらす病態を防ぐためには、患者さんの示すサインに引っ掛かりを感じるように、頭の片隅にでも病気の症状に関する知識を置いておくことが大切です。

自分が経験している目の前の症状や検査結果が、ありふれた病態とは何かが違うと感じる繊細さを大切にしたいと思わせられる報告でした。

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