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「『こころ』に劇的、漢方薬」 益田総子著


私はこの本を読んでから、より深く漢方について勉強したいと思いました。

ただ、残念ながらこの著作自体は絶版のようで、中古でしか手に入りません。アマゾンで検索したところ同著者の『漢方薬』シリーズなどが出ているので、漢方に興味がある方は一読をおすすめします。

まず、すごく面白いです。

すべてが物語として楽しめる内容となっていて、山あり谷ありの展開で、処方の工夫を行う著者の心の内も書かれていて、1章ずつ短編小説のように読んでしまいます。

さて、精神科医によって違うかもしれませんが、私は本で読んだ臨床試験の結果などよりは、自分で経験した奏効例(良く薬が効いた例)の印象の影響が大きいです。これは決して褒められたことではなく、EBM(証拠に基づく医療)の立場からは戒められるべき自経験主義だとは思います。

でも、行動が感情を伴った経験によって左右されるという点は、処方行動についても完全に例外とはならないのが本音のところです。

良くなった患者さんの顔の浮かぶ薬は、どうしても処方量が増えます。

例えば認知症の行動心理徴候(周辺症状)で良く使われる抑肝散(ヨクカンサン)ですが、私の場合はこの薬を選択肢として考えた時、職場のパワハラで苦しんでいた男性が「これ(抑肝散)を飲むとほっと落ち着くんです。」と笑顔で言われていたのを良く思い出します。

この本には、そういう薬にまつわる感情に溢れた経験がたっぷり描かれています。

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