かなり以前に『もし高校野球の女子マネージャーが……』がすごく話題になったので、ドラッカーという名前については知っている方も多いと思います。
何となく、経営とか経済のことを研究した人というイメージだと思うのですが、多くの分野に共通している考え方を分かり易く示してくれた人でもあります。
組織論でも有名な方ですが、個人の生き方についても多くの言葉を残しています。
この本は非常に広範かつ多数にわたる著作のうち、ドラッカーに造詣の深い編者が特に意義深く凝縮されている部分を抜き出して、日付を付したものです。
長文はつらいけれども、名言よりは少しまとまった内容を読みたいという読者にはちょうど良い分量です。
ドラッカーの著作に繰り返されている「自らの強みに集中せよ」というメッセージについて書かれた「1月24日」の一部を抜粋してみます。
「まさに、自らの強みに知り、それをいかに強化するかを知り、かつ自らのできないことを知ることが継続学習の鍵である。」
でも、「6月10日」ではこうも書いてあります。
「……強みと価値観が合わないことは珍しくない。よくできることと価値観が合わない。世の中に貢献しているとの実感が湧かず、人生、あるいはその一部を割くに値しないと思える。……(中略)つまるところ、優先すべきは価値の方である。」
経営についての研究というと、どうしても合理性や効率について強調するイメージを持たれがちですが、少なくともドラッカーについてはその根底にある「人間性」について追及した人であると言えそうです。
哲学は抽象的過ぎて読む気が起こらないけれども、実用一辺倒の知識も味気ないと感じている方に、非現実的な人間という生き物を現実といかに適合させるか、経営や組織という入口から追及したドラッカーの本は非常におすすめです。