発達障害について学んだ方であれば、応用行動分析学(ABA)について聞いたことがあるかもしれません。
私はABAについてはワークショップをいくつか受けたことがある程度で、専門的な知識があるわけではありません。
ただ、何とか目の前で起こっている問題に対して具体的な方策が欲しくて、本を読み漁っていた時期がありました。
ABAの優れている点はこの「具体的な方策」にあると思います。この本でも以下のように書かれています。
「困っている親に言葉だけで励まして共感してあげても、家に帰ったときに何の解決策も得ていなければ、途方に暮れてしまうでしょう。」
支えるための言葉だけではどうしようもない状況のとき、早急に行動上の解決策をとりたいときにABAは一つの解答となり得ます。
ABAの一面について若干の説明をくわえると、行動を個人と環境の相互作用としてとらえ、行動を促進する要素や抑制する要素について分析し、それらを調整することで行動に変化をもたらす方策を生み出します。
冒頭にはやや過剰に思える本書の効果の強調がつづくため、抵抗感を覚える人もいるかもしれません。しかし、中身は具体的な経験に基づく説得力のある内容で、質問者と回答者の対話形式で進むため、非常に読みやすくなっています。
しかし、行動の変化には環境を調整したり、工夫を行うための強い意志が必要であることを感じさせる内容ともなっており、ここまでのことはできないと思う方も多いと思います。
私にとっては、具体的で強い方策には、治療者の覚悟と周囲の人間の「痛み」が必要だと実感した本でした。