この本は「毒になる親」の被害から立ち直るための方法を解説した本です。
まず、「毒になる親」とは、どのような親かについてこの本では
「この世に完全な親などというものは存在しない。どんな親にも欠陥はあり、だれでも時にはそれをさらけ出すことはあるものだ。この私自身、自分の子供に対してひどいことをしてしまったことはある。どんな親でも一日二十四時間子供に気を配っていることなど不可能だし、時には大声を張り上げてしまうこともあるだろう」
以上のように完ぺきではあり得ない親としてのあり方に共感を示した上で、以下のように定義しています。
「とろこが世の中には、子供に対するネガティブな行動パターンが執拗に継続し、それが子供の人生を支配するようになってしまう親がたくさんいる。子供に害悪を及ぼす親とは、そういう親のことをいう」
そして第一部で「毒になる親」について多くの事例をあげた後、第二部ではセラピーの実際を説明しています。
特に注意しなければならないのは、(この本の中でも繰り返し述べられているように)被害が重篤である場合にはセラピーを独りで実践しようとしてはならないということです。
この本の中で提唱されているのは、症状の原因にまでさかのぼる痛みをともなうセラピーであり、最初の段階の「激しい怒り」から始まり、すべてつらい体験や自分の感情に向き合う過程を含んでいます。確かに、現在の状況を揺り動かすという点で、多くの危険をはらんだ方法と言えるかもしれません。
しかも、ほとんどの場合はグループセラピーが採用されているとも書かれており、日本の精神科・心療内科でこの考えに沿った治療を行うことは多くの点で困難と思われます。
この本は、真っ向から原因に向き合う姿勢で、虐待の治療について詳しく書かれた本です。このテーマについて少し興味のあるという多くの方にすすめられる本ではありませんが、深く頷ける部分もあり、何とか日常の診療に活かしたいと思わせられる内容でした。