この本は自閉症スペクトラム(発達障害)の「こだわり行動」に特化した本です。
自閉症スペクトラムの特性の中でも本質的で最も困ることが多いとされている「こだわり行動」のことを豊富な事例とともに、詳しくに解説しています。
「こだわり行動」の本質にふれた冒頭の部分を抜粋させてください。
「自閉症の人たちは、例外なく“こだわる”気持ちをもっています。そして、物や状況、人までも『変わらなければ安心』と思い込んでいます。そのために、自閉症の人たちは『変えない』ための行動を起こします。それが、こだわり行動です。
こだわり行動は、変化に富むところの対人交流の機会を回避する結果を招き、コミュニケーションや社会性の発達にも当然、悪影響を及ぼします。要するに『人に応じることができるルートが限られていく』、ひいて言えば『人に応じることができなくなる』ので、発達も滞ってしまうのです。そのようなこだわり行動に介入し対処した『事例』を整理してノウハウを皆様に提供するためにまとめたのが本書です」
さらに「はじめに」の中で、「対処」と「対処法」について、人が課題に遭遇したときの反応を
①課題や問題の性質や内容を吟味して、それに前向きに取り組む(課題/認知中心の戦略)
②情緒的にまず反応して、「いやだな」「面倒だな」「回避しよう」という消極的な態度に出る(情緒中心の戦略)
と整理し、自閉症スペクトラムの場合のこだわり行動に対しても①と②の両面からアプローチすることが有効であると説いています。
それらの対処法についても、事例の中で具体的に述べられており、非常に参考になります。
また、本書の中では「介入」を「『楽しませ』『喜ばせ』『人と一緒に共同作業を行うっていいな!」と実感させるために行う『関係づけ』のアプローチ」と定義しており、「介入」とは単なる行動のコントロールを行うための手段ではないことを示しています。
多くの療育に携わる人が、この本の中に示されている気持ちや方法を共有出来たら、きっと自閉症スペクトラムを取り巻く状況が今よりも少し明るくなるのではないかと思わせるような本です。