以前からうつには栄養の見直しが必要なことは分かっていました。どの栄養素が、決定的な影響を持っているかのエビデンス(証拠)は少ないのですが、食事の内容を調べたかなり大きな規模の調査でもメンタル領域の不調に多種類の栄養素が関わっていることは明らかにされています。
今回ご紹介する本はかなり人気があるのでご存知の方も多いと思われます。
うつのみではなく、多くのメンタルヘルスに栄養不足が関わっている可能性について解説した本をご紹介します。
中で特に取り上げられているのは、鉄やマグネシウム・亜鉛等のミネラル、オメガ3などの脂肪分、たんぱく質、ビタミンB1・B6・B12やビタミンC、ナイアシン(B3)などのビタミン類など様々ですが、中でも鉄欠乏の女性が多いことから、鉄欠乏の女性を「テケジョ(鉄欠乏女子)」と名付けて注意喚起を行っています。
実際、今までに血液検査正常の複数の方で鉄剤投与を始め、気分の調節障害が改善したことがあり、この本の内容は非常に納得して読むことができました。
冒頭に栄養・食事とココロの病気についてふれた箇所があり、抜粋させてください。
「……ココロのSOSに耳を傾けて、救ってあげられるのもあなたしかいないのです。どうやって救うのでしょう。
その方法はいろいろです。心療内科や精神科に行って、抗うつ薬や抗不安薬などを処方してもらうこともできます。漢方薬を使う人もいるかもしれません。あるいはカウンセリングや、マッサージ、鍼灸治療を受けたりする方法もあるでしょう。もしかしたら、離婚や退職という大ナタを振るう人もいるかもしれません。
(中略)
……どんな治療法が効くかは言いきれません。それでも……
たったひとつだけ確信をもって言えることがあるのです。
食事を変えてください。いまの食事を見直しましょう。
どんなにすぐれた治療法でも、食事という「体を支える土台」がグラグラだと、なかなか改善できません」
この本であげられている例は、うつ傾向、パーソナリティ障害、パニック障害、幻覚妄想状態、大人のADHD、産後うつ、子どもの発達障害、気分変調症など多岐にわたります。
この本の終わりでも述べられていますが、精神疾患の治療は「総力戦」です。薬物治療のみで、環境や栄養への配慮のない治療は今後あり得なくなっていくと思われます(あるいは、そう望みます)。
今後、当院でも来月から血液検査できる態勢を整えて、食事の見直しや鉄剤・ビタミン剤などによる補給(少なくとも一時的には必要な場合も多いと思われます)、漢方処方(栄養療法との相性が良く、補助的に体質改善に働きます)などにも対応できるようにする予定です。