大気汚染と循環器疾患や呼吸器疾患との関連について調べた論文は数多く存在しますが、今回は認知症との関連を示した論文を紹介します。
騒音や大気汚染は認知症の発症と関連しているだろうか? ロンドンにおけるコホート研究
2005年において認知症を発症していない50歳から79歳、およそ13万人のデータが集められ、2013年まで調査されました。そのうち2000人程度(1.7%)が認知症を発症しました。
まず、大気汚染の指標として二酸化窒素を用いて、濃度の分布を5分割したとき、最も高濃度のグループは最も低濃度のグループに比較しておよそ1.4倍の危険率を示していました。これは、環境要因で危険率の差を見た研究の中では比較的大きな数値です。他の関連していそうな要因を調整した数値ですので、認知症発症への大気汚染の関与を示す証拠として、今後因果関係を含めて調査される価値のある結果と言えます。
大気汚染の影響を避ける方法として、ラッシュアワーの通勤を避けたり、料理や掃除のときに換気に気を付けること等が紹介されていました。
認知症の発症の原因については、多くの論文が発表され、影響する因子まで含めると、結局何に注意すれば良いのか分からなくなる点もあります。ただ、今回示された大気汚染との関連は、他の多くの疾患でも指摘されている内容なので、少なくとも「きれいな空気」は体にも脳にも良いということは言えそうです。