重度の精神疾患(統合失調症)が子どもの知的能力に影響を与えることが知られています。また、出産時の合併症も同様の影響をもたらします。
さらに、重度の精神疾患の母では出産時の合併症が多いことも知られています。
今回の論文は、母の精神疾患と出産時の合併症が、それぞれ独立に子の知的能力に影響を与えるのかを調べたものです。
子どもの知的能力と精神障害:全人口調査における母の精神疾患及び産科的合併症との関連
出産時の合併症とは無関係になるように調整した後でも、統合失調症の母の子は知的障害になり易いという結果でした(そうでない場合より1.7倍)。
また、出産時の合併症も精神疾患とは独立に、知的障害の増加をもたらしていました(こちらも1.7倍)。
結論として、統合失調症と出産時の合併症はそれぞれ独立に子の知的能力に影響すること考えられました。
精神疾患が子に与える影響について良く質問を受けます。しかし、どんな共存する因子が影響を与えているのか分からず、その影響の度合いは複雑だと思われます。今回は統合失調症の影響を、共存する影響因子から切り離して評価しようとした論文でしたが、これで結論が出たわけではなく、他の共存する因子が影響している可能性も十分考えられます。
精神疾患の遺伝的影響についてお伝えするときには、このような他の因子の影響も十分考えた上で、見極めができていない点に関しては慎重に情報提供する必要があると思われました。