まず最初に、この本はうまくやった人の成功譚ではありません。なんとか「食える」ようになった人のぎりぎりの生活本です。
そういう意味で、まえがきや帯にも書いてありますが、仕事や人間関係がうまくいかない全ての人のための「日本一意識が低い」自己啓発書です。
最近読んだ「自己啓発系」の中ではダントツ1位の役立ち感があります。多分それは希釈されていない情報量と内容の必要性に切迫感を感じることができたからだと思います。
ADHDや発達障害全般の特性について当事者の立場から、成功と失敗を繰り返してきた生存者の立場から、特性についての気合の入った説明と詳細な生き残り術を紹介しています。
重いうつの時には甘い紅茶の入った魔法瓶を枕元に置いとけ等、相当細かく具体的な知識がこれでもかと登場しますが、
「この知識があれば何とか生き残れるかもしれない」
と思わせる説得力があります。
会社を「部族」と呼び、風習を学んでそのカルチャーの中で生き残るためには「茶番センサー」を止めろ等、新語や切り口の新鮮な言葉に溢れ、読んでいてとにかく飽きません。
些末なことかも知れませんが、文章のリズム感も良く、乱暴な言い方をしていても、生理的に心地よさが残ります。
久しぶりに書かれた必然性を強く感じさせる本に出会った気もします。
すべての方に「まえがき」だけでも読んでいただきたい「生き残り」ハック本です。