
かなり前からうつ病の発症が脳の構造に画像上確認できる影響を与えることが指摘されてきました。
今回は、より詳細にうつ病と脳の構造変化の関連を調べた論文をご紹介します。
うつ病にかかった経験と灰白質の体積の関係
結果的には生涯でうつ病にかかった経験のある人の脳では、広範囲の領域(研究では16の小さな領域ごとに評価しています)で灰白質と呼ばれる脳細胞の本体が存在する部分の体積が減少していました。また、発症の年齢やうつ病の病態に深い関わりがあるとされているセロトニン受容体の多様性(遺伝型)によっても違いが見られました。
これによって、以前から言われているように、少なくともうつ病の発症が脳の構造的変化をもたらすことや発症時期やうつ病に関連する遺伝子による影響を受けていることが示されました。
うつ病で休職に入られた患者さんから、家族に「一日中寝ているくせに何で気分が落ち込むんだ」等と言われた話を聞くことがあります。
ご家族の側にも様々な事情があると考えられますが、患者さんからそのような話をきく度に、もっとうつ病が「ちゃんとした病気」になったら良いと思うのです。
そうしたら、ちゃんと目で見て分かって、数値で理解され、症状も「気のせい」にされずに済むのに……と思います。
現在の医学で可能な正確な診断や適切な治療の選択(いわゆる医療上のベスト・プラクティスというものの追求)はもちろん非常に重要なのですが、患者さんが本当に心から休養をとるためには、今回紹介したような基礎的な研究によってうつ病に対する認識そのものが大きく変わる必要があるといつも感じています。