うつ病をはじめとする精神疾患と腸内フローラ(細菌叢)との関連が指摘されてきました。腸内環境を整えることが精神疾患の治療にも役立つのではないか、あるいは腸内環境の状態が診断の役に立つのではないかと期待されています。
最近、精神疾患のみではなく身体疾患についても同様の指摘がなされることもますます増えており、「プロバイオティクス」(腸内細菌叢を改善するために有益な細菌を摂取し、腸内環境を整える試み)が実践されています。
この種の「腸内環境正常化」を謳う食品や健康法が流行しており、私も体に良いならと食べた覚えがあります。
しかし、今回発表された研究結果によるとそれほど単純な話ではなさそうです。
腸内細菌叢のプロバイオティクスへの抵抗性は宿主の個別性と細菌の特徴に関連する
まず、マウスを使った実験では摂取された腸内細菌は定着せず、腸の環境にほとんど影響を与えませんでした。
さらに人間ではもっと事態は複雑でした。細菌叢が変化するかは細菌の種類や腸管の部位によっても異なり、個人の体質によっても変化に富んでいました。
そして、今まで腸内環境を知るために有効と思われていた便の内容が、あまり腸内の実際の細菌叢を反映していないことが分かってしまいました。
この研究によって、いわゆる「プロバイオティクス」の有効性について疑問符がついたのみでなく、研究法についても便を採取して調べる簡便な方法があてにならないかもしれないと示唆されました。
今後、「プロバイオティクス」の実践や効果の研究法に大きな影響がありそうな内容でした。